
これからは、人間が自分自身の「性癖(へき)」を突き詰めていく時代です。
ここで言う「性癖」とは、
理由はないし、理性で考えたらまったくわけがわからないのだけれど、
ある特定の事象に対して、「おなか」の底から情熱やよろこびを感じてしまう、
その人特有の愛おしい「偏り」のこと。
これまでの時代、
私たち人間は社会的な集団からはみ出すことを何よりも恐れてきました。
「普通と違う」「一般から外れる」ことは、
すなわち、死、生きていけないことを意味していたからです。
だから、自分のなかにある「はみ出た部分」を必死に隠し、なかったことにして、
理性の力で自分自身とその特性を「平均」の枠に押し込めてきました。
しかし、時代は一気に変わりました。
AI(人工知能)が私たちの生活に当たり前に入り込んできたからです。
◆AIは「平均化」の天才である
AIは、膨大な過去のデータから「平均化された答え」を一瞬で弾き出す装置です。
つまり、「一般」「普通」「常識」と呼ばれる領域を担ってくれる、平均化の天才なのです。
逆に言えば、AIの計算からはみ出ることは、人間にしかできないことでもあります。
だから、これからは、「普通」のことはすべてAIにお任せしてしまえばいい。
そして私たち人間は、その平均からはみ出してしまう自分自身の輪郭をしっかりと自覚し、
それを「自己表現」としてアウトプットし続けていく。
それが、AIとの明確な役割分担であり、これからの人間のお役目なのだと思います。
◆「はみ出た部分」こそがあなたの宝物
AIと対話しているときに、ふと強烈な違和感を覚えることはありませんか?
それはAIがポンコツだからではなく、AIが提示する完璧な「平均」と、
あなた自身の「はみ出た部分」がぶつかり合うからこそ生まれる違和感です。
そして、その違和感の正体こそが、あなたの「個性」であり、「性癖」なのです。
「なぜか知らないけれど、ここに静かな興奮をおぼえる」
「こんなわけのわからないことに、えも言われぬよろこびを感じてしまう」
例えば私の場合、日々の食事で出た生ごみをコンポストで土に還し、
それをまた農の循環のなかに還していくプロセスに、なんとも言えない恍惚感をおぼえます。
子どもの頃から土を見つめ、触り、嗅ぎ、味わい、
そこにいのちが循環していくことに、静かな高ぶりを感じていたのです。
これも、私個人の立派な「性癖」です。
また、飲食店を経営されている、あるコミュニティメンバーさんは、
「メニューを決めてから買い物に行くより、
目の前にある材料からメニューを組み立てていく、
そのプロセスにたまらなく萌える」とおっしゃっていました。
日常のほんの些細なことでいいのです。
そこに小賢しい理屈や、「世間に認められるか」といった他者の目線や、
道義的な正しさは必要ありません。
ただ、いまここにある自分一人のよろこびに、100パーセントの純度をもって素直になること。
そこに、あなただけの宝物が見つかります。
◆自己主張ではなく、品の良い「自己表現」を
ただし、ここで気をつけたいのは、
「私の性癖をわかって!」「みんなもこれに合わせるべきだ!」
と大声で叫んで徒党を組もうとする「自己主張」の罠に嵌まらないことです。
それをやってしまうと、結局は、
自分の性癖を「一般的な正しさ」にすり替えようとする、
過去の戦いの構造に逆戻りしてしまいます。
そうではなくて、クールな頭で、ただ淡々と、
自分一人のよろこびとして受け入れ、生きていく。
同じ性癖を持つ人たちと一緒に「あるね」と笑い合い、
違う性癖を持つ人とも調和の中で生きていく。
私という魂のかたちを知れば知るほど、
そこに無理のない、品の良い「自己表現」が自然と生まれ、
結果として、それがあたらしい時代のお仕事へとつながっていくのです。
◆理性の「あたらしい」使い道
これまで、私たちは「普通」という枠からはみ出さないように、
自分を監視するために理性を使ってきました。
しかしこれからは、理性の使い道が変わります。
自分自身が一体何に感性をふるわせるのか、その「はみ出た部分」を知るために、
自分を未知の場所に連れて行ったり、あたらしい情報に触れさせたりするために、
理性というものを使っていくのです。
AIが「普通」という枠の中の仕事を完璧にこなしてくれるあたらしい時代。
これからは、自分の中の、どうしようもなくはみ出してしまう部分
=性癖を突き詰めたもん勝ちです。
ありもしない「普通」という幻想のなかで自分の姿をぼやかしたままでは、
あっという間に自分を見失い、混乱の渦に巻き込まれてしまいます。
自分の魂の輪郭を、自分の性癖を、しっかりと知っておくこと。
それがこれからの時代を生きる、私たちの命綱になります。
あなたが、おなかの底からよろこびを感じるものは何ですか?
人間だからこそ持っている、その愛おしい偏りを、堂々と表現していきましょう。