【みんなのTANDENメソッド体験記】番外編その1 岡戸香里さんインタビュー 〜ジャワ舞踊とTANDEN〜

みんなのTANDENメソッド体験記番外編。
本日は、ジャワ舞踊の第一人者である、岡戸香里さんのインタビューを掲載します。
ご自身の深い体感からの、壮大な気づきに満ちたインタビュー。
ジャワ舞踊とTANDENの世界の奇跡の融合、どうぞじっくりとおたのしみください。

※こちらは2022年6月に収録したインタビューです。

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◆「なるほど、これが丹田か!」

小出:今日は、TANDENメソッドに触れてからの香里さんの変化や気づきなど、詳しくお聞きしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

岡戸:よろしくお願いします。

小出:香里さんは、TANDEN Lab.が2021年の8月に始まってすぐにご参加くださったんですよね。

岡戸:はい。遥子さんの存在はそれ以前から知っていたのですが、実際に瞑想に参加したのは、TANDEN Lab.が始まってからでした。

小出:TANDEN Lab.にはさまざまなプログラムがあるのですが、香里さんは、まずはTANDEN瞑想にご参加くださいました。最初にTANDEN瞑想を体験した時、どんな感覚がありましたか?

岡戸:丹田の感覚がすごくわかりやすいな、と思ったことを覚えています。おなかに「ほんとうの顔」があって、その鼻で呼吸をするっていうイメージが面白くて。それ以前にも、別の瞑想や坐禅はやっていて、腹式呼吸も坐禅の時にそれなりにやっていたのですが、いまいち感覚が掴みづらかったんです。でも、遥子さんのガイダンスにしたがっておなかで呼吸をしてみたら、「なるほど、これが丹田か!」っていうのが、すぐに体感できて。

小出:さすが、感覚が鋭いですね!

岡戸:私はジャワ舞踊の踊り手なのですが、踊りの世界でも丹田から動くことが基本になっているんですね。それで、以前から、丹田の感覚をしっかり味わっておきたい、と思っていて。そこにヒットしました。

小出:それはうれしいです。

◆気づきの連鎖が起きてくるように

岡戸:でも、ごめんなさい、正直な話、TANDEN Lab.には、そんなに期待もしていなかったんですよ(笑)。8月はオープンキャンペーンで月会費無料だったのでなんとなく入ってみた、っていうぐらいだったんですけど。でも、最初に瞑想をした時の体感が面白くて、「これはいいかも」って。それで、ほぼ毎朝、瞑想会に参加するようになったら、不思議なんですけど、どんどん気づきの連鎖が起きてきて。「やっぱりここにはすごい可能性がありそうだ」って。

小出:期待が大きすぎなかったのが、逆にプラスにはたらいたのかもしれませんね。気づきの連鎖が起きてきた、とのことですが、最初に「これは!」っていう大きな気づきがやってきたのはいつ頃でしたか?

岡戸:TANDEN瞑想をはじめて2ヶ月経たないぐらいだったと思います。

小出:すごいスピード感ですね! その時の気づきを言語化していただくことはできますか?

岡戸:なんて言えばいいんだろう……。ニュアンスが難しいんですけれど、あえて言葉にするなら、「私の奥から世界を見ているものがいた!」っていう感じですかね。私という個人じゃなくて、もっと全体的なものが、私を通して世界を見ている感じ。私という個人は、なにも見ていないし、聞いていない。でも、すでに見えているし、聞こえている。なんだこれ!? って。そして、なににも影響を受けない「これ」は、これまでもずっと「ここ」にあったと気づいて、感動しました。

小出:すごい! それって、これまで当たり前に持っていた、個人としての「私」の感覚が揺さぶられるような気づきですよね。

岡戸:TANDEN Lab.に入って、TANDEN瞑想を習慣化するようになってから、なぜかはわからないんですけれど、こういう気づきが不意に訪れることが多くなったんです。

小出:TANDENメソッドが指し示しているのって、まさしく、個を超えた全体性そのものとしての世界観なので。丹田自体がそういう場所なんですよね。だから、本質的なところでの気づきが、理屈を超えてうながされるのかもしれませんね。

岡戸:直に働きかける感じはありますね。

◆瞑想中に「答え」がやってくる

小出:そういった気づきは、香里さんの場合、どんな感じでやってくることが多いんですか?

岡戸:私の場合は、やっぱり、瞑想中にやってくることが多いですね。リラックスして、それこそ丹田に心を置いておくと、不意にやってくる。

小出:そうですよね。私の場合も、おなかのあたりにあったかい感覚がある時とか、ふわ〜って広がっていくような感覚がある時とかに、大きな気づきやインスピレーションがやってきます。

岡戸:丹田に意識を置いておくと、静けさを感じるんです。ここがポイントなのかも。

小出:確かに、その静けさこそが、本質的な気づきの源泉なのかもしれませんね。

岡戸:このお話に関連するかはわからないですけれど、あえて表現するなら、私は、丹田は神の領域、それより上は自我の領域のように感じているんです。

小出:浄土系仏教にならって表現するのなら、丹田は他力領域、それより上は自力領域、ということになるでしょうか。

岡戸:そうですね。他力と自力ということで言えば、たとえば自分の力じゃどうしてもわからないことがある時、私は瞑想前に「なにかヒントをください」ってお願いしておくんです。そうすると瞑想中に答えというか、インスピレーションがやってくることが多い(笑)。

小出:それは便利ですね!(笑)

岡戸:でも、インスピレーションがやってくる時って、実は、最初からわかっているような気がします。「あ、今日は来るな」とか。やってくるものに備えておく感じですね。

小出:なるほど。それこそまさしく「他力」のはたらきですね。

◆丹田を通して「すべて」とつながっている

岡戸:つい最近も、ジャワ舞踊の東京公演があったんですけれど、今回の踊りや役柄に関して、瞑想中にたくさん気づきやインスピレーションをもらいました。

小出:私もその公演を観覧させていただいたんですが、本当に素晴らしかったです。今回の踊りは戦いがテーマだったのに、どういうわけか、そこから感じるのは圧倒的な「愛」だったんです。二人の男性の戦いを描いていて、最後にはきっちり勝敗がついてしまうのに、二人から表現されているのは、まさしく「愛」そのもだった。すごくびっくりしました。これ、そのまま「まぐわい」じゃん! こんなことあるの? って。

岡戸:まさしく、そこに関する気づきを瞑想中にもらったんです。「ぜんぶ愛だ。戦いすら愛だ。まぐわいなんだ。愛しかないんだ!」って。踊りの相手と、ひいては「すべて」と、丹田を通してつながっている感覚というか。

小出:すごい感覚ですね。でも、そうなんですよね。自分と相手の間に丹田を通してのまぐわいが起きると、神と人、天と地、ありとあらゆるすべてが同時にまぐわっているんだ、すべてが「愛」を表現しているんだって。そのことが理屈を超えてわかってしまうんですよね。

岡戸:そこが腑に落ちたのが、今回、すごく大きかったですね。

小出:香里さんの踊りは、まさしく「神」とひとつになったところから生まれてくる、絶対的な美しさとともにあるアートだと感じました。本当に、ものすごいものを観せていただきました。

岡戸:光栄です。

◆丹田から動くと、伝わるものが増える

岡戸:でも、ここでもやっぱり大切なのは丹田なんですよね。

小出:先ほども「丹田から動く」というお話をされていましたね。

岡戸:練習の過程でも、丹田から動く、丹田から踊る、というところはすごく意識しています。

小出:丹田から動く時の体感って、どんな感じなんですか?

岡戸:それこそ、おなかのあたりにエネルギーというか、あったかい感覚があって、そこから直に動く感じです。

小出:丹田から直接手足が生えていて、そこから動かすイメージでしょうか?

岡戸:そうそう。でも、実際やってみるとわかるんですけれど、丹田に意識を置いて、丹田から動こうと思うと、全然大きな動きができなくなるんですよ。どちらかと言えば、動き自体は小さくなる。コンパクトだけれど、とてもパワフルで印象的な、まったく余分なものがない動きになるんですね。

小出:ああ、わかる気がします。私は踊りはやったことはないですけれど、たとえば丹田を意識して言葉を話そうとすると、いつもより言葉数がぐんと少なくなってしまうんですね。全然言葉が出なくなる。でも、その分、その時に出た言葉はいつも以上に密になるというか、直に相手に届くようなものになっているような感覚があります。

岡戸:そうなんですよね。上手い方々の踊りって、見ていても、受ける印象が全然違うんですよ。なんというか、表面じゃなくて、もっと内側が感じられる。丹田あたりが生きている、丹田から動いているので、動きは大げさでなく、コンパクトでも、伝わるものは多い。役柄表現も、押しつけがましくないけれど、その分、ダイレクトに伝わってくる。そして、たとえ激しく動いたとしても、動きの中に静けさを感じるんです。

◆丹田を通して「おまかせ」してしまう

小出:香里さんの踊りの動きも、静かなのに、ものすごい迫力がありました。なんて言うんだろう、すごくいい意味で、「踊っている感」がなかったんですよ。香里さんが、香里さんの力だけで踊っているわけじゃないな、って感じました。

岡戸:ああ、うれしいです。ありがとうございます。それこそ、先ほど遥子さんがおっしゃった「他力」の領域のお話なんだと思います。もちろん、練習過程では動きや型を丹念に確認しつつ、役柄表現などの工夫を凝らしつつ準備するのですが、この後は、それらすべてを丹田におさめて、丹田に心を向けて、起きてくることを信頼する。そこにすべてをまかせてしまう。自分の力でやろうとしない。丹田に意識を向けて、そこに動きを起こす。そんな感覚で踊っています。

小出:丹田に力を入れるというより、意識を向ける、という感じなんですね。丹田は無限の空間なので、力なんか入りようがないですものね。

岡戸:そうそう。丹田の周りの筋肉に力を入れることはできるけれど、それもほんの軽くでいいんですよ。丹田の周辺に軽く力を入れて、そこに意識を向けたら、あとは起こることにおまかせするだけ。

小出:「おまかせ」ですか! なるほど。

岡戸:そういう意味でも、丹田は信頼の領域だな、って思うんです。丹田を意識して、そこを信頼すると、全身から余分な力が抜けるんですね。私は、モダンダンスをやっていた時の姿勢の癖で、どうしても首に力が入りすぎるんです。でも、丹田を本当に信頼すると、首の力が抜ける。これは目から鱗が落ちるような体験でした。

小出:面白いです。舞台に立つ香里さんって、存在感はあるのに、ものすごく透明なんですよね。透明な存在感で会場を満たしてしまう。その透明な存在感は、「信頼感」から来るものだったんですね。

岡戸:踊りって本当にぜんぶ出ちゃうので。その人の精神性というか、見ている世界が。それこそ丸裸で舞台に立っているようなものなんですよね。

小出:「どう動くか」というところよりも、「どうあるか」というところですね。

岡戸:今回の踊りでも、「戦いもまぐわいなんだ、愛なんだ」という気づきがやってきてから、その踊りに対する私の意識が変わってしまったんですよね。踊り方を意識して変えたわけではないのですけど、動きやタイミング、呼吸が自然と少し変わる。そうしてそれは伝わるものなんだと思います。

小出:ものすごく伝わってきました。ここには、二項対立を超えた世界が表現されているな、これが「愛」なんだな、って。

岡戸:うれしいです。

◆アートと丹田 二項対立を超えた世界

小出:それにしても、香里さんは、今回、本当にものすごくアクロバティックというか、難しいことを成し遂げましたよね。戦いがテーマの踊りで「愛」を表現してしまうなんて……。戦っているけれど「愛」しかないなんて、頭で考えたら、まったくわけがわからない世界ですよ。

岡戸:そうなんですよ。説明して、って言われても、言葉では絶対に説明できない。でも、踊りだったら、なにか、直に伝わるものがあるのかもしれないと思って。

小出:アートの世界の最大の可能性って、まさしくそこにあるような気がします。アートって、本来的には、すべての二項対立を超えた世界から生まれる表現のことだと思うので。そして、そのありとあらゆる二項対立を超えた世界っていうのが、実は、そのまま丹田の世界なんですよね。

岡戸:そう思います。今回の踊りもそうでしたけれど、ジャワ舞踊って、戦いの踊りがすごく多くて。だから、一見すると二項対立っぽく見えてしまうところがあるんですけれど、実は、すべての踊りが、敵も味方も、勝者も敗者も、その両方を排除しないっていう哲学のもとに構成されているんです。ジャワ舞踊のマエストロと呼ばれているような方々も、みなさん、そのようにおっしゃるんですね。私自身、日々TANDEN瞑想を実践して、TANDENの世界観に触れ続けているので、そういったお話がすごくよくわかるというか、腑に落ちるものはありますね。

小出:見事に踊りの中でそれが表現されていて、本当に感動しました。対立構造の踊りなのに、私には、二人が大きな「愛」の中でまぐわっているようにしか見えなかった。踊り自体がまぐわいというか、エネルギー交流そのものなんだな、って。そんなふうに感じました。

岡戸:エネルギーの交流はすごくあります。踊っている時は、相手とエネルギーの世界でまぐわっているんです。だから、たとえば相手が自分の後ろにいたとしても、だいたいなにをしているのか、どんなふうに動いているのかわかってしまう。もちろん、自分と相手、双方が開いておかないと、そういった交流も生まれないんですけれど。上手い人と踊ると、本当に、エネルギーがビンビン来るんですよ。こっちも開いて同じ量のエネルギーを出さないと釣り合わない。でも、それがうまくいった時は、お互いにどんどん引き出し合う感じになります。言葉以上、形以上のところは、私もそうやって学んできました。

小出:これもまたすごいお話です……。そのぐらいビンビンくるようなエネルギーの交流って、やっぱり、頭じゃなくて肚に心を置いておかないと受け止められないですよね。というより、肚に心がないと、交流自体生まれないのでしょうね。

岡戸:そうなんですよ。頭の方に気が上がっていると、そもそも、まったく交流ができないんです。

◆いまあるものに心を合わせること=神とのまぐわい

小出:今お聞きしたのは踊り手同士、人間同士のお話でしたけれど、ジャワ舞踊では、いわゆる神の役を演じることも多いですよね? 演じる、踊るって、そのまま相手とのまぐわいだと思うんですけれど、神との間のまぐわいって、どのような感じで起こるのでしょう?

岡戸:そうですね……。神を演じるというより、踊りを通して神と繋がるような儀式的な舞踊を踊ることの方が多いのですが、いまあるものに心を合わせることで、それが起きてくるような感じはありますね。

小出:いまここに、ただある、という感じ?

岡戸:そう。でも、それは頭ではできないので。やっぱり丹田なんですよね。丹田に心を置いて、安心していまここにある、みたいな感じですかね。

小出:まさしくTANDENメソッドの真髄のところですね! 今お聞きしたのは、普遍的な神、ただある神、TANDENメソッド的に言うなら静的な神とのまぐわいのお話だと思うのですが、動的な、個別のはたらきとしての神、個別の名前や性質を持った神を演じる時の感覚を教えていただけますか? それこそ「依り代」になる感じでしょうか?

岡戸:うーん。入られちゃうタイプの踊り手さんもいて、そういう芸能もあるんですけれど、私はそれではないですね。本番で踊る時に、なにか神らしきものが降りてきたようなエネルギーを感じることは多いのですが、入られるとか乗っ取られるとかではなく、受け入れて一緒に在って踊る感じです。演じる世界にグイっと入っていくのを助けてくれる感じ。

小出:助けてくれる感じって、とても素敵です! ここ、ものすごく大事なところですよね。神さまは、絶対に人の身体を勝手に乗っ取ったりしないので。神と人との間に和合、まぐわいが起きる時も、必ず互いの合意があってからですよね。

岡戸:そうなんですよ。人の身体を勝手に乗っ取ってしまうのは、神さまじゃなくて、もっとその辺にいるような、いたずらで入るような精霊たちなので。私には入れないです(笑)。

小出:香里さんは、まさしく、しっかり丹田に心が置かれているから。神と人もそうだし、ありとあらゆるまぐわいは丹田で起こって、そこには「ちはやぶる」渦のエネルギーが発生しているんですね。神と人のエネルギー交流によって、渦は無限に拡大し続けていって、同時に無限に凝集し続けていっている。でも、拡大だけじゃなくて、凝集のエネルギーもちゃんと働いているので、個人としての輪郭は、むしろはっきりするんですよね。そんな人には、招かれざるものは寄り付けないでしょうね。

岡戸:そう思います。

◆丹田は排除のない世界であり、愛の世界

小出:最後に、香里さんが感じているTANDENメソッドの魅力についてお聞かせいただけますか?

岡戸:実は、TANDENメソッドのどんなところがすごいのか、私自身まだまだしっかり言語化できていないんです。でも、TANDEN Lab.に出会って、瞑想を習慣化するようになってから、どんどん本質的な気づきが私の元にやってきたことは事実で。

小出:よくわからないところ、言語化できないところにこそ、本質はありますものね。

岡戸:あと、生きること自体がすごく楽になったし、よりたのしくなったということは確実に言えますね。もちろん、生きていればいろんなことが起きてきますし、瞬間的に頭の方に気が上ってしまうこともあります。それでも、すぐに丹田に戻れるようになったので、出来事にとらわれなくなった。平和な時間が増えました。

小出:そうそう。丹田ってまさしく「ホーム」とも呼べる場所で、「ただいま」「おかえり」が聞こえる場所なんですよね。どんなに感情が乱れたとしても、帰る場所がしっかりあるっていうのは、すごくありがたいですよね。

岡戸:TANDEN Lab.と出会って、本当に、いろんなものがつながった感じがします。私の場合はたまたまジャワ舞踊をやっていたから、今日はそのあたりの気づきをたくさんお話しさせていただきましたけれど、本当は、なにひとつとして、TANDENの世界観と関係のない世界ってないと思うんです。

小出:そう思います。TANDENメソッドが指し示している世界って、端的に言うと、どんな世界だと思いますか?

岡戸:あえて言語化するなら、無限の空間であり、排除のない世界であり、静けさの世界であり、愛の世界、ですね。

小出:感動的なお話をありがとうございました。とてもたのしい時間でした。

(2022年6月収録)

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