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―― ジェラシーというのはないですか。そういう事態になったとして。
よしもと 状況によるかな。
岡本 今自分がいる目の前で変なことをしなきゃいいのよ。
よしもと そうなんですよね。多分気にならないんじゃないかなという気がする。
岡本 いいじゃない。いないんだから。
よしもと というか、そんなことまで考えたらいろんなことを考えなきゃいけなくなる。
岡本 いろんなことを考えるのは結構ですけど。おかしいのよ。今そこに彼が帰ってきて抱き合えるのに、「どこへ行っていたのよ。あの人と何かしてたんでしょう」とか、そっちの方を実在にすることはないの。バカじゃないのと私は思うよ。今そこにいる二人が向き合っているほうがずっと実在なんだから、そのことを大事にすべきじゃない。ほかのことなんて、やきもち焼いている暇はないの。
よしもと なかなかそうは思い切れないんだわ。
―― やっぱりドラマとかにしつけられて、「あら、この名刺」とか「この領収書」とか。
よしもと 携帯の着信が……。
―― 今、メールで浮気チェックとかみんなしていますからね。
よしもと まず人の携帯を見ようって発想がないですけど、みんなするんだな。
岡本 知って、相手をきゅうきゅうとっちめたからどうだっていうのよ。私、本当にわからない。自分の前にいなかったときのことを、なんでそんな実在にしたがるのか。
よしもと でも、それは相手よりも自分の中の何かなんでしょうね。わからないけど。
岡本 今、自分がここにいて、彼がそこにいて、向き合っているんだからそれでいいじゃない。
(『恋愛について、話しました。』 岡本敏子・よしもとばなな=著 イースト・プレス=刊 より)
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昨晩、友人から
「もし恋人の浮気を疑ったらどうすればいい?」
とのLINEが入りまして。
「実体験か?」と問えば、
「いま、まさに実体験中だ」と答えるので、
私なりに誠実に返信を打って送ったのですが、
果たして友人のこころには届いたのだろうか……。
その返信内容をここでつまびらかにすることは避けますが、
まあ、冒頭で引用した岡本敏子さんと吉本ばななさんが
語っていらっしゃるようなことですよね。
「浮気を疑ったからといって別になにもしない。
普段通り、一緒にいる時間をただただ味わって、
普段通り、自分の好きなことして暮らすかな~」
……みたいな。
それが一番だと、本気で思うんですね。
敏子さんとばななさんの対談本は、
いまから10年以上前に発刊されたもので、
だから、私が最初に読んだのは、
まだ20歳かそこらのときで……。
衝撃でしたね(笑)。
とくに引用部分は衝撃でした。
「いや、実際無理でしょ、これ!
敏子さん、達観しすぎでしょ!!!」
と絶叫していました。
でも、私もいよいよ極まってきたのか(なにが?笑)、
ここで語られている内容の正しさ(というか真髄)が、
最近になって、恐らく、
寸分の狂いもなく理解できるようになって……。
だって、事実、そのお相手は、
いま、私と一緒にいるわけです。
それ以上のことは……
もちろん、それ以下のことも……
ほんとうに、ほんとうに、ほんっっっとうに!
どこにもないんです。
自分のあたまの中以外、どこにもないんです。
まあ、あたまの中のファンタジーとたわむれるのも
もちろん、楽しいことではあるのですが、
それはあくまでファンタジーでしかないのでね。
そちらにばかり、気力と体力を費やしてしまってもね……。
実際にいま、好きな人と一緒に時間を過ごしている。
……以上!
ほんとうに、それだけでいいんですよね。
……と思うんですよね。
ほんとうに、「いま」しかないし、「これ」しかないんですよ。
「いま」以上、もしくは以下、
「これ」以上、もしくは以下のことなんか、
まあ、考えたかったら考えてもいいけれど、
別に、まったく考えずに生きていくこともできるんだよな~、と。
そのことをあたまの片隅にでも置いておけば、
恋愛に限らず、ありとあらゆる場面で発生する
「どうしようもない苦しみ」は、
少しずつ、姿を消していくんじゃないかなあ。
参考になればうれしいけれど、
ならないかな~(笑)。
まあ、私の考えはともかくとして、
敏子さんとばななさんの対談は、一読の価値ありです。
オススメですよ~。
よい一日をお過ごしください◎