やっぱりきれいな青ぞらと すきとほった風ばかりです。

2015年11月6日

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「眼にて云ふ」   宮沢賢治

 

 

だめでせう

 

とまりませんな

 

がぶがぶ湧いてゐるですからな

 

ゆふべからねむらず血も出つづけなもんですから

 

そこらは青くしんしんとして

 

どうも間もなく死にさうです

 

けれどもなんといゝ風でせう

 

もう清明が近いので

 

あんなに青ぞらからもりあがって湧くやうに

 

きれいな風が来るですな

 

もみぢの嫩芽(わかめ)と毛のやうな花に

 

秋草のやうな波をたて

 

焼痕のある藺草(いぐさ)のむしろも青いです

 

あなたは医学会のお帰りか何かは知りませんが

 

黒いフロックコートを召して

 

こんなに本気にいろいろ手あてもしていたゞけば

 

これで死んでもまづは文句もありません

 

血がでてゐるにかゝはらず

 

こんなにのんきで苦しくないのは

 

魂魄(こんぱく)なかばからだをはなれたのですかな

 

たゞどうも血のために

 

それを云へないがひどいです

 

あなたの方からみたらずゐぶんさんたんたるけしきでせうが

 

わたくしから見えるのは

 

やっぱりきれいな青ぞらと

 

すきとほった風ばかりです。

 

 

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「死」を思いながら見上げた、

 

あの空の青と、あの風の透明さとが、

 

いまでも私をベースから支えてくれています。

 

 

 

そして、それらは、

 

ほんとうは、いつだって、ここにある。

 

いつだってすべてを包んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう。

 

生かしてくれて。