「ゆるせない人」のゆるしかた

2015年9月12日

「ゆるせない人」が、こころの中にたくさんいた時代、

 

私は、本当に、生きづらい人生を送っていたなあ……

 

いま振り返って、しみじみと、そんな風に思います。

 

 

 

「ゆるしなさい」なんて言われても、

 

「ゆるせるわけないじゃん!」と端からつっぱねていました。

 

 

 

こわかったんですね。

 

もう、その時点で、

 

「ゆるせない人がいる」

 

というのは、

 

自分のアイデンティティのひとつになっていたから。

 

ゆるしてしまったら、自分が崩壊してしまうよ、と本気で思っていました。

 

そうして、自ら「自由」になるチャンスを踏み潰して生きてきました。

 

 

 

そんなあるとき、一人の女性に出会いました。

 

彼女は、私に、こんなことを言ってくれました。

 

 

 

「その人たちは、もう、十分にしあわせなんだって思ってみたら?」

 

 

 

はじめは、目の前の女性がなにを言っているのか、さっぱり理解できませんでした。

 

戸惑う私に、彼女は繰り返しました。

 

 

 

「彼や彼女は、いまはもう、十分にしあわせです。びっくりするぐらいしあわせです。そう思ってしまえばいいのよ」

 

 

 

あまりに斬新すぎる発想で、はじめ、かなり、ポカンとしました。

 

その後、反発心がむくむくと首をもたげてきました。

 

「そんなこと、できないし、したくありません……」

 

私が抵抗を口にしても、彼女は笑って繰り返すだけでした。

 

「大丈夫。彼や、彼女は、もう十分にしあわせです。一回でいいのよ。そう思ってみて」

 

 

 

「そんなこと言われても……」

 

ひどく抵抗しつつ、でも、目の前に座る彼女のあっけらかんとした笑顔には、

 

なにか、こちらのこころを溶かすような力があって……

 

数分後には、私は、静かに、うなずいていました。

 

「やってみます……」

 

 

 

 

 

はじめは、もちろん、うまく行きませんでした。

 

「あの人は、もう……」と口に出したは良いけれど、その次がどうしても出てこない。

 

くちびるが震えました。

 

声も、震えました。

 

声自体出すまいと、喉の奥がきゅうっとしまっていくのが分かりました。

 

無理だ、と思いました。

 

 

 

「無理です……」

 

かすれた声でそう告げても、目の前の女性は「大丈夫よ」と笑うだけ。

 

 

 

何度も何度も何度も深呼吸を繰り返して、

 

手汗を何度も何度もハンドタオルでふき取って……

 

 

 

「あの人は、もう、しあわせです。しあわせに、笑って、生きています……」

 

 

 

言えた……!

 

 

 

そう思った瞬間、私の目からは大量の涙が溢れました。

 

その涙は、そのまま解放の涙でした。

 

 

 

果てしない安堵感だけが、そこには広がっていました。

 

「ゆるされた」ことからくる、安堵感でした。

 

 

 

相手をゆるした瞬間、

 

私は、自分に、ゆるされたのでした。

 

 

 

完全なる、祝福の瞬間でした。

 

 

 

 

 

 

 

数年前の、そんな出来事を、ふいに思い出しました。

 

届くといいな、と思います。

 

 

 

 

 

どうか、よき日を、お過ごしください。