天上天下唯我独尊

2014年10月24日

天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)

 

【解】(釈尊が生れた時、一手は天を指し、一手は地を指し、7歩進んで、四方を顧みて言ったという語)宇宙間に自分より尊いものはないという意。

(広辞苑より)

 

 

 

 

 

「天上天下唯我独尊」

 

中学校で同じクラスだったヤンキー男子の学ランの裏ボタン(懐かしい……)の上に刻まれたのを見たのが、その8文字との初対面であった。

 

出会いがそれであったため、私は長らく、その言葉に対して、文字通り「中二くせ~~~」「ださ~~~」といった印象しか持っていなかった。漫画などに描かれる暴走族の特攻服にもその言葉が躍っているのを見かけるし……。

 

そもそも「宇宙間に自分より尊いものはない」とは、なんと横柄で傲慢な態度だろう! これ、本当に、あのお釈迦さまが言ったことなの? う、うっそだ~!

 

と、まあ、はっきり言って、私、このエピソードが大嫌いだったんですね。

 

お釈迦さまともあろう人がこんな尊大な発言をするわけがない。これはきっと、後世の人々が、仏教というものを権威づけようとして作り上げたニセのエピソードだ、と。ばかばかしい! なんてくだらないんだろう、と。

 

 

 

でも、ある瞬間、ふいに、「あ、私、勘違いしてたわ」と思ったのだ。

 

 

 

 

「天上天下唯我独尊」

 

これは、決して、生きとし生けるものすべてをもって形成されたピラミッドの頂点に自身を据えた上での、傲慢極まりないトンデモ発言なんかではない。「Aさんよりも、Bさんよりも、Cさんよりも、私は偉い! 全人類の中で一番偉い! チャンピオンだ!」といった趣旨の、相対界基準でのケチくさいお話なんかではないのだ。

 

 

 

「天上天下唯我独尊」

 

これは、つまり、絶対界……文字通り、「宇宙間に自分一人しか存在していない」という世界からの発言なのだ。

 

この「自分」というのは、紛れもなく、これを読んでいる「あなた自身」のことだ。

 

そして、「あなた」は、「私」だ。

 

 

 

あなたは「私」で、彼も「私」で、彼女も「私」。

 

この世界のすべてが「私」でできている。

 

この世界に「私」でないものはない。

 

「私」が消えたら、世界もまた消える。

 

だって「私」こそが世界だから。

 

 

 

宇宙間に自分ただ一人しか存在していないのならば、すべてが「自分」なのならば、それは必然的に、「宇宙間に自分より尊いものはない」ということになるだろう。だって比較対象がそもそも存在しないのだから。

 

「天上天下唯我独尊」は鼻持ちならない勘違い発言なんかじゃなくて、単なる真実の言葉だったのだ。

 

 

 

これね、♪ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン……とかいうかの有名な歌の世界とも、また違っていて。だって、この歌の世界では、Aさんという花、Bさんという花、Cさんという花、みんなそれぞれに違う美しさを持っているのですよ~、みんな違ってみんな良いのですよ~、自分の花を咲かせましょうね~、っていうことになっているでしょ?(ざっくり言い過ぎか?)つまり、これって、Aさんという花、Bさんという花、Cさんという花、それぞれが「存在する」ことを前提としているわけでしょ?

 

でも、「天上天下唯我独尊」の世界では、

 

Aさんという花、Bさんという花、Cさんという花、これらすべてが存在しない。AさんもBさんもCさんもすべて「私」という花だから。世界には、「私」という花しか存在しないのだから――

 

というお話になるのだ。

 

「ある」を基準にした世界と、「ない」を基準にした世界の違い、というべきかな……。

 

「ある」はどこまでも幻想だし、「ない」はどこまでも真実だ。

 

 

 

 

 

この世界に、「あなた」以上に尊い存在はいない。

 

だって、すべてが「あなた」なのだから。