すでに満たされている

2016年12月14日

おはようございます。小出遥子です。

この詩、あまりにも自分にとって大切すぎて……
少し前にも引用したけれど、今日も、載せますね。

生命(いのち)は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分
他者の総和

しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない

 

吉野弘 「生命は」

互いに欠如を満たし合っていることを、
知りもせず、知らされもせず、
そうやって、世界はゆるやかに構成されていて……。

なんてうつくしい事実なんだろう。
もう、それだけで、十分じゃないか。

でも、「それだけで十分」だとは思えないのも、
また、人間の悲しい性(さが)で……。

すでに満たされているからこそ、
いまここに存在できているのに、
それ以上に満たされることを願ってしまう。
他者に、欠如を、満たしてもらおうとしてしまう。

満たしてもらおうとする前に、
すでに満たされていることに気づくこと。

それだけで、世界は、変わってしまうよ。

 

雨、上がってきたかな。

よい一日をお過ごしください。